2008-01-28(Mon)

大相撲千秋楽 天声人語2008年01月28日(月曜日)付

天声人語
2008年01月28日(月曜日)付

 ずいぶん盛大に座布団が舞ったものだ。きのうの大相撲の千秋楽、両横綱の相星決戦は白鵬に軍配が上がった。久々に堪能した相撲好きもいたことだろう。行儀の悪さを言われつつも、折々に舞う座布団は、ファンの正直な思いを

乗せている▼座布団ばかりではない。昭和の初めごろまでは、羽織を脱いで投げる人もいたそうだ。粋筋の女性客などは、帯揚げをほどいて投げた。相撲部屋の若い衆らが拾って持ち主に届け、ご祝儀をもらう習わしもあったと聞く▼

祝儀どころか、「金返せ」の声とともに座布団が飛んだのが、前回の九州場所である。千秋楽、優勝圏内にいた千代大海が突然休場した。負けても優勝と決まった白鵬は、気が抜けたのか結びの一番で転がされた。さえない幕切れへの

不満が、座布団に乗って舞った▼横綱の相星対決は5年半ぶりだった。力を絞ったがっぷり四つの末、白鵬が渾身(こんしん)の上手投げで朝青龍を仕留めた。白青どちらのファンも、きのうの座布団には「納得」の思いを乗せたので

はないか▼ファンに「叱(しか)られ」ても「怒られ」てはいけない。そんな意味の言葉を、横綱審議委員会委員長だった独文学者の高橋義孝さんが残している。叱ってくれるのは、根に愛情があるからだという▼手に汗握る大一番

で、朝青龍問題という「前門の虎」は何とか檻(おり)につないだ格好だ。だが若手力士の死亡事件という「後門の狼(おおかみ)」は、なお捜査が続く。ファンの「叱」が「怒」に変わる危うさを抱えたまま、日本相撲協会の厳しい綱渡りも当分は続く。

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